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【能登半島地震から見たインフラ対策の緊急性】

 能登半島地震から4月1日で3か月が経ちました。被災した珠洲市でほぼ全域の約4,250戸、輪島市約2,600戸、能登町約800戸など5市町約7,860戸でいまだに断水状態が解消されていません。水道管路1キロあたりの被害を見てみると、輪島市で2.63箇所となっており、熊本地震(熊本市)の0.03箇所、東日本大震災(仙台市)の0.07箇所、新潟中越地震(新潟県長岡市)の0.30箇所などを大きく上回っています。具体的には斜面崩壊に伴う管路の流出や、非耐震管の被害が多く発生していました(※1)。

 2022年度(令和4年度)、導水管や送水管など、「基幹管路」と呼ばれる水道管の耐震適合率は全国平均42.3%でした。石川県は37.9%と全国平均を下回っています。水道事業は主に市町村が主体であり、全国に約4,300存在していますが、管路更新が進まない理由として①節水機器の普及や人口減少により有収水量(料金収入の対象となった水量)が減少した結果、約3分の1の水道事業者において、原価割れを起こしているため②携わる職員数はピークの1980年と比べて39%程度減少していて資産管理や危機管理対応が十分に行えない状況にあるためとされています(※2)。さらに管路の場合、管自体の耐震性能に加えて、その管が布設された地盤の性状(軟弱地盤、液状化しやすい埋立地など)によって、その耐震性が大きく左右されることもあります(※3)。

 2024年(令和6年)4月1日から水道整備・管理行政が厚生労働省から国土交通省及び環境省へ移管されます。社会資本整備や災害対応に関する専門的な能力・知見や、層の厚い地方支分部局を活用しつつ、上下水道一体で取り組む体制を構築し、機能強化を図っていくとしています(※4)。また大阪や神奈川、広島や香川などで複数の市町村自治体が集まり「広域水道企業団」を形成し水道事業の経営改善ならびに耐震化対策に取り組む動きも見られます。

 今回取り上げた上水道だけでなく、下水道や道路、トンネル、橋など多くのインフラの経年劣化・耐震化対策が喫緊の課題となっていると言えるでしょう。
 
※1 第1回上下水道地震対策検討委員会(2024/3/12)上下水道施設の被害状況について
※2 厚生労働省医薬・生活衛生局水道課「令和3年度全国水道関係担当者会議 令和4年3月9日(水)」 給水人口別の水道事業数及び職員数の状況
※3 厚生労働省「水道事業における耐震化の状況(令和4年度)令和6年3月22日」
※4 国土交通省令和6年度予算決定概要(令和5年12月)P40