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【災害と睡眠の関係性】

現代人は生活の多様化や人間関係などによってストレスを抱える人が多くなっています。それにより睡眠を上手くとることが出来ず、生活に影響が出ている人が増えています。睡眠障害は、新たな現代病として現在様々なメディアでも取り上げられるようになってきました。

人は睡眠をとることで、その日1日の経験を記録し、脳や身体の疲労を癒していきます。睡眠は生活に欠かすことが出来ない行為であり、質の良い睡眠を正しく取れないと身体、心理ともに悪影響を与え、回復力や判断力、体力自体の低下を招くこととなります。大規模災害が発生した場合、私たちの生活は一瞬で壊れ、生活リズムを激変させる可能性があります。睡眠の重要性を理解し、避難所運営時にもできる限りの対策が必要であると認識いただき、今後の防災対策を行っていただきたいと思います。ではどのような対策が必要なのか、考えていきましょう。

災害時、避難所での不便な生活では、物理的な環境変化と心理的ストレスが睡眠に大きく影響を与えることが報告されています。また、避難所での睡眠に関する研究も発表されており、騒音やプライバシーの対処不足、避難所自体の過密状態が睡眠の質を著しく低下させることがわかりました。

心理的なストレスについても、不安や恐怖が睡眠に悪影響を与えることがデータで示されています。特に、自然災害にあった被災者は、次の災害への恐怖がストレス反応として働き、不眠などの症状につながるといった発表もありました(Pfefferbaum, B., & North, C. S. (2020). Mental health and disaster recovery. The New England Journal of Medicine, 383(6), 514-522)。

災害時の睡眠不足は、被災者にとっては重大なリスクとなって襲ってきます。睡眠不足により脳の認知機能は低下し、日常的な作業での判断力や集中力が鈍くなるほか、適切な行動ができなくなり、反応の遅れにより危険が迫ることもありえます。被災者同士の人間関係や支援物資管理などにも障害を与えることにもなりえます。

また、昨今問題となっている災害関連死にもつながる内容として、避難所などの不便で衛生状態も悪い生活下では、免疫力を低下させ誤嚥性肺炎や感染症にかかるリスクが高まってきます。避難生活の長期化で睡眠不足が続いた場合、心臓病や糖尿病などの慢性的な健康問題を引き起こす可能性もあります。研究では、睡眠時間が6時間未満の人々は、風邪にかかるリスクが4倍以上になることが示されています(Cohen, S., Doyle, W. J., Alper, C. M., Janicki-Deverts, D., & Turner, R. B. (2009). Sleep habits and susceptibility to the common cold. Archives of Internal Medicine, 169(1), 62-67)。

呼吸法やストレッチなど、寝る前に心身をリラックスさせる方法を実践することは、副交感神経を優位にし、ストレスホルモンの分泌を抑え、寝つきが良くなり質の良い睡眠を得やすくなります。たとえば、Mindfulness-based stress reduction (MBSR) と呼ばれる瞑想プログラムは、睡眠の質を向上させ、ストレスを軽減する手段として有効であることが報告されています(Gross, C. R., Kreitzer, M. J., Reilly-Spong, M., Wall, M., Winbush, N. Y., Patterson, R., & Mahowald, M. (2011). Mindfulness-based stress reduction versus pharmacotherapy for chronic primary insomnia: A randomized controlled clinical trial. Explore, 7(2), 76-87)。

規則正しい生活リズムも心がけましょう。できるだけ定時に起き、太陽の光を浴びましょう。ヒトの体内時計の周期は約25時間であることがわかっており、1日の周期(24時間)は体内時計との間で約1時間のずれがあります。太陽光を浴びることで体内時計がずれを修正し、それにより夜になったら自然に眠くなるリズムを作りやすくなります。また、昼間の適度な運動も、夜の睡眠を促進する効果があります。

睡眠が取れない場合には、短時間の仮眠も疲労回復やパフォーマンス向上に効果的で、特に15~30分程度の仮眠が最適であることが多くの研究で示されています。災害時の睡眠は、環境変化や心理的要因によって大きく影響を受けますが、睡眠不足は避難生活を送るうえで心身に大きな負担をかけることがわかっています。

事業所内での職員待機や避難所運営で多くの被災者を受け入れるときなど、睡眠環境の改善は欠かすことが出来ない対策と言っても良いでしょう。睡眠の質を向上させるための様々な対策は、世界中で研究発表されたエビデンスに基づいており、有効とされています。災害時の出来る限りストレスのない避難生活と健康の維持のため、今一度睡眠について学んでほしいと思います。

【参考文献】 
日本睡眠学会声明「能登半島地震で被災された皆さんの睡眠を守るために」
https://jssr.jp/pdf/20240125.pdf